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バランス悪くても、直視すべき現実

エチオピア滞在中、不定期に在エチオピア日本人のために開かれる、「サロン・デ・アジス」が偶然にも開かれ、参加させて頂きました。そのゲスト・スピーカーには、Table for Two (http://www.tablefor2.org/)の小暮真久さんがいらしていました。

10億人の肥満、10億人の飢餓に苦しむ人々がいる世界の現状の中、カロリー・バランスを考えたおいしいメニューを選ぶと、その節約できたカロリー(=コスト)を、テーブルの向こう側にいる飢餓に苦しむ人に分けて、共にハッピーな食卓を囲むというコンセプトのTable for Two。日本で初めて講演を聞いてから、イギリス・エチオピアと、それぞれ社会背景が異なる場所で小暮さんとお会いしましたが、同じ話でも聞く場所によって、自分が考えること・感じることが違うことに一番驚きました。

エチオピアは、節約されたカロリーが、子供たちの給食へと変身し、このプロジェクトの恩恵に授かる対象となっていますが、実際にその国にいながら活動内容を聞くと、カロリーを節約した(=日本)との関係がアンバランスのように思えて、違和感を感じたりしました。また、エチオピアの中でも緑豊かな地域は存在し、決して日々が飢餓との戦いではないため、そのイメージばかりが発信されてしまったら、またイメージの悪循環を生みだしてしまうのでは、とも思いました。サロンに参加されていた現地のJICA職員などと、このジレンマについてしばらく議論が続きました。

「私が我慢したカロリーを、あなたに与えてあげましょう」という見方をしてしまうと、どうも不自然な気分になってしまう。但し、未だに満足に食べられない子供たちがいるのは現実で、地球全体から見て、アンバランスな関係が存在するのも現実。だから、それを無理に否定しようとするのは、むしろ私が綺麗事を言っているに過ぎないのかもしれないと、その場を去ってから思いました。

Table For Two の素晴らしいところは、皆無に等しかった日本での寄付文化を、社員の健康管理の重要性に合わせ、多くの社員食堂への導入に成功し、また、少なからずアフリカに目を向くきっかけ作りが出来たことだと思います。また、アンバランスな関係への葛藤は、恐らく私以上にTFT当事者は感じており、そのためエチオピア国内で現地カフェ(Lime Tree Cafe)と提携し、そこでTFT食を提供するという一つの画期的な解決策を試みているのも素晴らしい。だから、アンバランスな関係への葛藤は続きつつも、Table for Two の活動を、これからも応援したいと思っています。そして、いつの日にか、そのアンバランスがなくなり、本当の意味で共に対等でハッピーに食卓を囲める様、何かしらの貢献をができればと思います。

「援助」の現状に納得できず、そして本業のビジネスを通して社会に還元している企業をケニアで目の当たりにして、私は民間の力を借りる選択をしました。特別な努力をしなくても、「当たり前」な行動として、社会に関わる企業・行政・一般市民全てが、長期的に持続可能な成長が得られる活動を促せれば、と思って。しかし、援助においても、民間においても、完璧な行動なんてない。なので、今、目の前にある現状の中で出来ることを自覚しつつも、現状に納得せず、葛藤を続けつつ、ちょっとずつ歩んでいくことが、私たち一人一人のやるべきことかな、と、エチオピアから戻って、改まった気持ちです。

エチオピア訪問: 本当に意味での現場主義・人づくり

短いエチオピア滞在の中で訪問させて頂いた、白鳥さんがJICAとして取り組まれているFRGプロジェクトには、とても共感しました。ご存じない方のために簡単に説明すると、農業を専門とした国の研究者が、単なる学術的な意義だけではなく、本当に現場の農民の役に立つ研究が実施されるようにと、研究者のトレーニングと現場とのコミュニケーションのを促すプロジェクトです。

私は普段、マクロのお金の流れを決める所で、企業の環境・社会・ガバナンス面での活動を評価・応援する投資の仕組みに関わっていますが、その評価対象となる企業が活動する「現場」への本当の影響を確かめ、再びマクロの動きに反映させたいという思いから、この数カ月間のお休みをもらってました。そのため、白鳥さん方の取り組みに通じるものがありました。

ついつい、政策提言・議定書等、マクロな話や流れに関わっている知的労働者の方が偉いと、世間的に判断しがちですが、現場の生産者・多くの雇用者があってこその社会・経済であることを、世界中どこの知識層でも忘れてはいけないと、改めて思いました。そして、そういう意味では「現場」を完全に忘れた(そもそも思うインセンティブも無い場合が多い)トレーダー達に、悲しさと恐ろしさを感じます。

一般的に短期の箱ものが多い日本援助の中で、長期視点での現場に適した人づくりと国づくりに視点を置いたFRGプロジェクト。こうしたプロジェクトは非常に大事ですが、その効果が見えるのはまだまだ先になるため、関わってきた人たちが喜べる成果がいつの日にか見えることを、切に願います。